イージーラブじゃ愛せない


ジョージの言葉に慌ててコンロを見るも、烏賊も海老もまだ焦げ目すらついていない。


ジロリと横目で睨んだ私にジョージは可笑しそうに口角を上げて笑うと

「エリンギ食った?美味いよ」

と、網の上で焼けていた茸を私の皿の上に乗せた。


「熱いうちに食いなって。ビールに合うよ~」


ジョージの言葉に負けて私はトングを置き、皿のエリンギを食してからビールを煽る。そして大きくひとつ溜息をついた。


「尽くし型だね、ジョージ。いい奥さんになるよ」

「まーね。俺、大切な人には優しいから」


知ってるよ。あんたが風間くんやりん、それに私にも特別優しいの。

それはジョージにとって友達がどれだけ大切か物語ってる。


馬鹿だな、と思う。そんな博愛精神を持っていながらどうしてそれを恋人に向けてこなかったんだろう、と。

そしてどうして。私をその大切な枠に入れておいたまんまにしてくれなかったのか、と。


――ちょっと、苦しく思う。


ウザいけど、チャラいけど、友達としては全然悪くないジョージとの今の距離感が。
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