イージーラブじゃ愛せない
「馬鹿なヤツ。こっちは貸切じゃないっつーのに」
周りのお客さんのクスクス笑う声に、赤くなった顔を湯船に半分埋ずめると、隣のりんが
「こっちは結構お客さんいるよー」
と大声で壁の向こうに返した。ちょ、やめて、恥ずかしい。
「え、マジ?失礼しました~」
ジョージのアホな声が浴場に響き、クスクス笑い声はますます盛んになる。おばあさんなんか「あらあらいいわねぇ」なんて、こっちに向かって笑い掛けてくるし。
ジョージめ。あとで覚えてろ。
羞恥に耐えられず顔を両手で覆っていると
「ジョージは馬鹿だねぇ」
隣のりんが可笑しそうに顔を綻ばせながら私に寄って来た。いやいや、返事したあんたもなかなかのモンよ?
けど、馬鹿と云う意見には全面的に同意なので私は頷いておく。
「本当に馬鹿だよ。キング・オブ・馬鹿」
「でも優しいよね」
私の言葉にそう返したりんは、素直すぎる瞳をまっすぐに向けてきた。