イージーラブじゃ愛せない
●告白ワンスモア●
●告白ワンスモア●
紅と黄色に彩られた山の散歩道は、夕暮れのせいか人が少ない。
自然に囲まれた静寂。小川に掛けられた小さな橋の上で足を止めると、サラサラと静かに水が流れる音まで聞こえた。
「このちっちゃい川がもっと上のほうまで続いててさ、さっきそこで俺たち魚釣ってきたんだよ」
「ふーん」
愛想のなさそうな返事をしながらも、胡桃は川を覗き込む。魚が見えないか目で追ってるのが分かる。
きっと、りんりんなら『へー!魚いるかな?見えるかな?』って素直に口にして同じように川を覗き込むだろうな。
けど、長い黒髪をかき上げながら無表情で川を見る目の前の子は、それが出来ない。同じくらいの好奇心を持っていながらも、決して表に出さない。
だって、胡桃は人一倍恥ずかしがり屋だから。子供っぽい本音の感情をなかなか見せたがらない事、俺は知ってる。
「もうこの時間は見えないよ。水温が下がっちゃったから、魚潜っちゃってる」
「ふーん」
きっとガッカリしてる気持ちを見せないまま、胡桃は川から離れると黙って橋を渡った。