イージーラブじゃ愛せない
「ちょっとだけ、話聞いてよ」
そう言った俺に、胡桃は『やっぱりな』と『嫌だな』を混ぜた表情をあからさまに向ける。けれど、それを口に出さなかっただけまだありがたい。
「やっぱ俺、柴木ちゃんのこと好き。全然あきらめらんない。ってか、あきらめるって選択肢がみつかんない」
自分でも往生際悪いなって思うけど。でも、本当に『あきらめる』って方法がこれっぽっちも浮かばないんだ。あんなにイージーラブを繰り返してきたのに、俺、今までどうやって恋を終わらせてきたんだっけ?って分かんなくなるぐらい。この恋の終局が見えない。
「側にいたい。1番近くに居続けたい。と……友達じゃなくって、これからは恋人として」
いつもなら『しつこい』と一蹴されてしまいそうな告白を、どういう訳か今日の胡桃は黙って聞いている。表情は決して明るくないものの、じっと考えるように俺の言葉を聞いてくれている。
けど、沈黙のあと開いた胡桃の口から出た台詞はやっぱり一筋縄じゃいかない。
「あんたとは、友達でいたい」
やっぱフラれた。でも、俺はヘコまない。っつか、正直嬉しくて驚いてる。
今まで『面倒くさい』や『ウザイ』で片付けられてたのに。初めて胡桃が俺との関係に向き合ってくれた。