イージーラブじゃ愛せない
冷たい風から守るように、俺は胡桃の身体を包むように抱きしめた。もう俺の体温ぜんぶ持ってちゃっていいから、胡桃に熱が伝わるように。
身体をくっつけ一生懸命熱を伝えようとしてると、やがて腕から逃れようとしてた胡桃が大人しくなった。
「……1分だけだからね」
抱きしめている俺の耳のすぐそばで、ボソリと小さな声が聞こえた。
1分。俺に与えられたラストチャンス。ウルトラマンよりみじけー。でも、与えられただけメチャクチャありがたい、絶対ムダにしない。
「まずは謝らせて。ごめんなさい。俺、柴木ちゃんの事ずっと好きだったのに他の女の子と付き合いまくった」
謝罪から始まった俺の話に、胡桃は一瞬ピクリと反応した後じっと聞き入る。
「すっごい臆病なんです、俺。だから、本当に好きな柴木ちゃんを恋人にする事がメッチャ恐かった。上手くいかなくなったらどうしよう、振られたらそれっきりになっちゃう、って。だから柴木ちゃんのこと一生大切な友達にして、恋は別の所ですればいーやって……イージーラブ繰り返してた」
あー俺カッコわりー。自業自得とは言え全部ぶっちゃけちゃった。これだからマジなラブって本当恐い。何ひとつチャラけて誤魔化せない。