イージーラブじゃ愛せない
「相手の女の子にも、柴木ちゃんへの本気の恋心にも不誠実でした。本当にごめんなさい」
覆うように抱きしめているから、胡桃の表情が見えない。今どんな顔してるんだろ?呆れてないといいんだけどな。
「だから、って言うか。俺、柴木ちゃんをイージーラブにする気はこれっぽっちも無いから。ずーっと側にいる、一生別れないくらいのマジです」
しまった、一生とかって重い?むしろペラい?あーもう、気持ち伝えるのって難しいな。
今、時間はどれくらい経ってるんだろう。胡桃はどんな表情してるんだろう。気持ちばかり焦って考えがまとまらなくなってきた。
なんとか言葉にしようと必死で、俺はもうビュービューと冷たい風が吹き抜けるのも気にならない。寒いとか感じてられない。
と、俺が焦っていると。
「……あと15秒」
「げっ!」
焦燥に拍車をかける言葉が胡桃の口から告げられた。
「えーと、とにかく!俺、胡桃が超好きだから!絶対他の男に取られるの嫌だから!一生大切にするから!」
ぎゃー!俺の馬鹿。すげー陳腐な言葉しか出てこねー。ってかまた一生とか言っちゃったよ。だからダメだって!
「……10、9、8……」
カウントダウンやめてー!俺はもうパニくって「えーと!好き!好きです!好き!」小学生以下の言語しか出てこなくなった。