イージーラブじゃ愛せない
やっと俺の気持ちに正面から向き合ってくれた胡桃はどこまでも強気で、絶対に『私も好き』とか『付き合おう』とは言ってくれなかったけれど。
「胡桃~!!」
俺はそれでも充分だった。このクールで意地っ張りで照れ屋な女の子から、不純に見えて限りなく“好き”に近い返事を引き出せたのだから。
嬉しくて嬉しくて力いっぱい抱きしめた俺を、胡桃が腕をつっぱってグイグイと引き離す。
「ベタベタすんな!」
「好き、超好き。ありがと。絶対大切にするから」
観念したのか腕の中に大人しく収まってくれた胡桃にキスを落とすと
「お礼言われる筋合い無い。別に、恋人じゃないんだから」
上目で俺を睨みながら、そんな事を言われた。
んもー全然説得力ないよ胡桃ちゃん。ほっぺた赤いじゃん。照れちゃってるじゃん。
「はい、はい。親友+アルファね。“愛”のアルファ」
笑って言った俺に胡桃はチョップをかましてから
「もう帰るよ!寒いし、りん達きっと心配してる!」
そう言って、さっさかと歩き出していってしまった。
俺は堪え切れない笑顔を浮かべたまま小走りすると、枯葉をサクサク踏んで歩く胡桃の隣に並び手を握る。
「手ぇ繋いだ方があったかいっしょ?」
一瞬だけ明らかに照れた顔をした胡桃は、またもやそっぽを向いたけど
「今だけだかんね。りん達のとこ着く前に離してよ」
絡めた指をほどく事はしなかった。
――一生大切にしちゃおう。マジで。
どうしようもなく大好きなこの子に、俺は心でそう誓ったんだけれど。
俺、ホントに馬鹿だから。
胡桃が出した『1番の友達+アルファ』の答えの意味を、全然分かっていなかったんだ。
ただの照れ隠しじゃないって気付いた時には手遅れだって。そんな事、この時ただただ浮かれてる俺は、気付かなかったんだよ。