イージーラブじゃ愛せない


「いいから早く寝なって。明日遅刻しても知らないからね」


肩にまわされた手をほどき、くっついていた身体を強引に押しやると

「はーい。おやすみ、胡桃」

ジョージはいつもの明るさで布団に潜っていった。それを聞いて、苦しかった胸の痛みがわずかに和らぐ。



……馬っ鹿みたい。こんなの。


チャらいクセに、健気に尽くす犬みたいなジョージも。そんなのに胸が痛んだりする自分も。滑稽だ。


友達だって宣言したばかりなのに、滑稽な恋になんかしたくない。センチメンタルに流されるイージーラブなんて、馬鹿らしくて目も当てられない。


ペットボトルの水を半分ほど乾いた喉に流し込んでから、私はもう1度ベッドに潜り直した。

既に寝息をたてていたジョージに背を向けて。

きっと温かいだろう彼の懐には、埋もれたくないから。





< 82 / 245 >

この作品をシェア

pagetop