イージーラブじゃ愛せない
「あー面白かったぁ!!」
2時間後。DVD特典の声優座談会やキャラクター設定集など全てを見尽くしてから、ようやく胡桃が満足そうな声を吐き出した。
「胡桃……俺寂しくてそろそろ死ぬかも」
2時間放って置かれた俺はベッドでうつぶせたまま、やっと振り返ってくれた胡桃に甘えた声を出すけれど。
胡桃はゴキゲンで鼻歌なんか歌いながら、俺をまるっと無視して冷蔵庫へ飲み物を取りに行った。
「くーるーみー!俺を構ってよー!」
「あーもーうっさい!あんたほんと構ってちゃんだね」
胡桃ってドS?これって放置プレイの一環?
あまりにも構ってもらえない俺はマジでちょっと泣きたくなってきたよ?
またもやイジけてベッドの上でゴロリと背を向けると、ペットボトルのキャップを閉める音が聞こえた後、胡桃が俺の隣に座ったのが分かった。
「で?どうして欲しいワケ?」
背を向けて寝そべったまま、胡桃の方に顔だけを向ける。その表情にはあからさまに「やれやれ」って書いてあるけれど、それでもやっと俺を見てくれたことが嬉しい。
拗ねていた顔をへにゃっと微笑ませて、俺は身体を起こしさっそく胡桃にキスをした。綺麗な形のクランベリー色した唇。飲んだばっかりのアイスティーの香りが仄かにする。
「……するの?」
構ってもらえなくて寂しかった分、たっぷりとキスを堪能していたら、唇が離れた合間に胡桃がそっと聞いてきた。
「んー。しない。せっかくだからどっか遊び行こーぜ。デートしよ、デート」
本当は結構もよおして来たけど。でもせっかくの休みだしね。一緒に外を歩きたい。
俺の提案に胡桃は軽く頷くと、抱きしめていた腕から抜け出し
「そうだね。せっかくお天気いいし、ちょっと出かけるかー」
窓の外を見ながら大きく伸びをした。