イージーラブじゃ愛せない
なんだ、興味はそっちか。可愛かった頃の俺にときめいてくれたワケじゃないのね。
「兄貴だよ。5つ上」
画面に表示された写真には、高校生の俺と並んで微笑んでる眼鏡を掛けた生真面目そうな兄貴も写っている。胡桃が興味を示したのはどうやらそっちの方だ。
「兄貴?驚くほど似てないね!」
「あー。血は繋がってないからね~」
一瞬、好奇心に火を灯した胡桃の表情が、俺の言葉を聞いてそのまま固まる。そして一気に気まずそうな顔。
「そうなんだ。……無神経なこと言ってゴメン」
「いや全然?おふくろが再婚したの俺が小学生の時だし、もうすっかり家族だよ」
あっけらかんと答えれば、胡桃の表情がどこか安堵に綻んだ。そんな、気にしなくていいのに。
「兄弟、仲いいよ。おやじはけっこー厳しいけどさ。でもそうやって兄貴と分け隔てなく叱ってくれたのって、すげー懐深いなって、感謝してる」
これ、ちゃんと俺の本音。大人になればなるほど血の繋がってない俺をキチンと育てた親父をスゲーなって感じる。
子供の頃は突然変わった家族の形に疎外感とか感じる事もあったけど。今となってはこれっぽっちも思わない。そうやって家族を築き上げてきたおやじを尊敬さえするよ。