イージーラブじゃ愛せない
「おやじ今でも厳しくってさ。だから俺が大学の時に金髪でチャラチャラだった事は内緒なの。さっきの写真とか見せたらゲンコツもんだね」
そう紡いだ俺の言葉に、ようやく胡桃の口元が笑った。良かった。変な気ぃ使わせたくないもんね。けど。
「そーいえば胡桃も兄貴いるんだっけ?一緒に実家住んでんだよね、仲いい?」
たわいもなく聞いた俺の質問に、形のいい唇がきゅっと引き締まってしまった。
「うちはあんまし」
そんな短い言葉だけ告げて胡桃は黙る。
俺が自分の事を胡桃に知って欲しいように、俺も胡桃のこと全部知りたい。そう思うのって、当然だよね?
けれど、その先を尋ね様とした俺の声を遮るように
「ジョージ、次あれやろ。オートテニス。テニサーだったんだから得意でしょ」
ベンチから立ち上がると胡桃は俺の方を見ずにアトラクションコーナーへ歩いて行ってしまった。
……言いたくない事、なんだろうな。
元々、胡桃は自分の事をあんまし話さない。もしかしたら人に話しにくい家庭環境とかかも知んない。
でも、俺じゃダメなのかな?
限りなく恋人に近い(っつか俺は恋人だと思ってるけど)“1番の友達+アルファ”の俺になら、頼ってくれたっていいんじゃね?もっと弱い所とか見せてくれても良くね?
なんて、俺のワガママな心は『もっと、もっと』と求めてしまう。『もっと俺と近くなってよ』って。
そんな気持ちを見透かすように
「ほら、早くやろ。今日は遊びに来たんでしょ」
胡桃はアトラクションコーナーの前から、ベンチに座ったまま動かない俺に手を招いた。