黄昏の特等席
 メイドの顔を見て、やはり出て行こうと思い、ドアへ向かおうとすると、彼女が立ち塞がっている。

「あの、私・・・・・・」
「こちらへどうぞ」

 にっこりと微笑んだメイドを見て、グレイスは頬を染めた。
 彼女にドレスを着せてもらったり、アクセサリーをつけてもらったり、化粧までしてもらい、まるでお姫様に変身した気分になった。

「可愛いわね!」
「とてもよくお似合いです」
「すごい・・・・・・」

 グレイスが二人に頭を下げて礼を言うと、そのまま広間まで案内された。
 豪華で広々とした部屋に、華やかな人達、数多くのご馳走、実際に見たことがなかったグレイスにとって、本の世界に入ったみたいな感じだ。

「夢見たい・・・・・・」
「現実よ」

 飲み物を取りに行き、そこにはたくさんの皿や料理が並べられている。

「グレイス、まだ先よ」

 友達はジュースを手に取り、グレイスに渡してくれた。
 パーティではダンスをしている姿を見たり、食事を楽しむなど、そんな時間を過ごした。

「パーティ、どうだった?」
「とても楽しかった!」

 時計を見ると、そろそろ帰らなくてはいけない時間になっている。長居したい気持ちを抑え、元の格好に戻り、自分の家に帰ろうとした。
 このときのグレイスは家に帰ることができなくなってしまうなんて、想像していなかった。
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