黄昏の特等席
 夢を見たグレイスは気を紛らわせるために屋敷内を散歩している。

「ここは・・・・・・」

 そこはグレイスが一度も入ったことがなかった遊戯室。
 ビリヤード台やカードゲームをするためのテーブル、ダーツなどが置かれていて、室内を歩き回っていると、チェスを発見した。

「懐かしい・・・・・・」

 チェスの遊び方を主に教えてもらい、たまに二人で遊んでいた。
 そのことを思い出して触れようとすると、後ろから誰かがグレイスの手を取った。

「っ!」
「一人で遊ぶ気か?」

 香りと声で後ろにいるのがエメラルドであることがわかった。

「そうじゃない。それよりどうしてここにいるの?」
「それは私の台詞。まぁ、いい・・・・・・」

 エメラルドが用事を済ませて部屋へ戻ろうとしたときにドアが閉まったところを見たため、気になってやってきた。

「不審者でも入り込んできたのかと思えば、君だった・・・・・・」
「ちょっと散歩をしていたの・・・・・・」

 決して悪いことをしようとしていたのではない。
 エメラルドはグレイスに遊戯室から出して、そのまま図書室へ向かった。
 図書室に着くと、エメラルドはドアを閉めて、グレイスを自分と向かい合わせになるように立たせる。

「汗、掻いているな・・・・・・」
「あっ・・・・・・」
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