黄昏の特等席
本当の名前
 エメラルドに告白をされてからもう六日も経過しているのに、グレイスはずっと溜息を吐いている。
 もしも彼が言ったことが何もかも嘘だと告げられたら、グレイスは大きなショックを受けるだろう。立ち直ることもできず、また人間を恐れて、あらゆるものを拒絶してしまいそうだ。
 そんな不安を抱えながら、自分の右目を手で覆いながら歩いていると、背後から声をかけられる。

「あれ? アクア?」
「その声・・・・・・」

 屋敷の階段を上がったときに以前、キッチンで一緒に仕事をしていた先輩二人と再会した。

「本当。久しぶり!」
「お久しぶりです。お元気そうで何よりです」

 三人で手を握りしめ、久々の再会を喜んでいた。

「会いたかったんだから!」
「私もです!」

 図書室で仕事をするようになってから、何ヶ月も彼女達の顔を見ることも、言葉を交わすこともなかった。

「アクア、今、時間がある?」
「はい」

 時間があるので、グレイスは笑って頷いた。

「良かったら、お茶しない?」
「いいですね」

 このメンバーでティータイムを外で過ごすことは初めてだ。
 どこにするのかもう決めているのか質問すると、二人は同時に頷いた。

「ええ。もちろんよ」
「アクアは・・・・・・行ったことがないところかもしれないわね」
< 128 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop