黄昏の特等席
 エメラルドがキッチンへ行ったときにメイドがいたので、簡単に手懐けたらしい。
 それを聞いて、グレイスが不機嫌になっていると、エメラルドはグレイスの頬に手を滑らせた。

「もしかして、嫉妬しているのか?」
「いいえ。ちっとも」

 きっぱりと否定して、その手を振り払うと、エメラルドは面白そうに笑っている。

「残念だな」
「とてもそう見えない・・・・・・」

 彼が淹れてくれた紅茶はディンブラ。ほのかな花の香りで、とても穏やかな飲み心地の紅茶。
 レモンなどのフルーツを入れたフルーツティーやミルクティーにしても美味しく、ミルクティーにしたときのクリームブラウン色がとても美しいのも特徴。
 綺麗なオレンジの水色(ティーカップに注いだ紅茶の色のこと)を見てから、一口含む。

「美味しい・・・・・・」
「それは良かった」

 適温の紅茶を飲みながら、彼の紅茶に関する長話を聞いているグレイスは彼の知らない一面を知った。
 どうやら彼も屋敷の主と同様に紅茶を好んでいるようだ。

「何か甘いものでも、持ってきたら良かったかな?」
「ううん、いらない」

 夜遅い時間に小腹が空いていても、健康に害するので、何も食べないように心がけている。
 甘いものを好まないのだと勘違いをされたので、グレイスはそうでないと否定する。
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