黄昏の特等席
 正直彼女の印象が良くないので、グレイスはあまり話を聞きたくなかった。
 二人が顔を見合わせて、困った顔をするので、その気持ちはさらに強くなる。

「・・・・・・ヴァネッサ様はよく数多くの方々と喧嘩をしているの」
「どんな・・・・・・ですか・・・・・・?」

 簡単に言うと、屋敷の主にもっと気に入ってもらうために邪魔する女達と激しい喧嘩を繰り返しているのだ。
 口喧嘩から始まって、それがだんだん暴力まで加わるようになった。

「ぼ、暴力!?」
「しっ!」
 
 大声を出さないように言われて、グレイスは声を小さくして、話の続きを知ろうとする。
 二人も詳しいことはわからないようで、今の話は他人から聞いたようだ。

「怪我人が増え続けていて・・・・・・」
「そりゃそうよ・・・・・・」

 挙句の果てには武器まで持ち出すようになってしまい、ずっと邪魔な女達を排除していたヴァネッサも怪我を負ったらしい。

「メイドの話では、軽傷で済んだみたい・・・・・・」
「軽傷だからまだましよね」

 それでもヴァネッサは懲りもせず、怪我を負わせた女に仕返しをしようとしたところ、主に止められた。
 話を聞けば聞くほど、恐ろしく、彼女が何を考えているのか、全然わからない。
 言葉を失っているグレイスを見て、二人が話を続ける。
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