黄昏の特等席
「それ、関係ない人達まで巻き込まれたのでは?」
「いいえ。怪我人はいないわ」

 邪魔をされるのは嫌なので、人気のない場所で喧嘩を繰り返していたのだ。

「恐ろしいわね・・・・・・」
「その一言じゃあ、追いつかないわよ」
「それもそうね・・・・・・」

 これだから恋愛は厄介で嫌だ。
 誰もが自分さえ良ければ、相手なんてどうなっても構わないと思っているから。

「誰かを好きにならなかったらいいのに・・・・・・」

 そしたら、争いなんてせず、人を傷つけることだってない。

「・・・・・・無理ね」
「無理とは?」
「そうね。誰も好きにならないなんて、できないわよ」
  
 グレイスが言ったことに対し、二人はそんなことできないと言い張る。

「どうしてですか?」
「本気で好きになったら、誰にも止めることなんてできないから」

 もう一人の先輩が頷きながら、同意している。

「人の心も自分の心もそう簡単にコントロールできたら、悩んだりしないわよ」
「本当ね・・・・・・」

 一番頭の中に思い浮かべている人物がいたら、もうすでにその人に惹かれている証拠。

「いいわね。こうやって恋愛話に花を咲かせるのは・・・・・・」
「仕事の話か遊びの話ばかりだったものね・・・・・・」
< 133 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop