黄昏の特等席
 同性同士で喫茶店に入ったのはどれくらい前だったか、思い出そうとしても思い出すことができなかった。
 こうやって過ごす時間も良いことだと思い、残りの紅茶を飲んだ。

「ねえ、そろそろ・・・・・・」
「あれ? もうこんな時間?」

 店にある時計を見て、先輩が声を上げた。
 まだ三十分程度しか経っていないと思っていたのに、時計の針はそれをとっくに過ぎている。

「たくさんお喋りしたから」
「楽しいことに夢中になったら、時間なんて忘れてしまいますよね」

 二人が同時にグレイスを見たので、何かおかしなことを言ったのか、露骨に驚いている彼女達に話しかける。

「私、変なことを言いました?」

 決してそんなことはないに違いないが、二人の態度がそれを不安にさせる。

「いや・・・・・・」
「私達といて、楽しかった?」
「はい」

 二人は一緒にいる時間の間、何気ない発言で不快にさせてしまったのかと思い、テーブルに視線を落とす。

「ほっとした・・・・・・」

 グレイスが顔を上げると、彼女達の表情が和らいでいる。

「アクアを待っている間、二人で話していたんだよね」
「急に誘ったから、迷惑かけたんじゃないかって・・・・・・」

 そんなことないという意味を込めて首を横に振ると、二人は笑顔になった。

「それを聞いて安心したわ」
「ええ、本当に」

 またこうして一緒に出かけられたらいいことを話しながら、三人で喫茶店を後にした。
< 134 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop