黄昏の特等席
 即座に断ると、エメラルドの腕がグレイスの腰に巻かれて、完全に拘束された。

「・・・・・・力づく?」
「アクアといなかった時間を埋めるんだ」

 エメラルドに腰を擽られ、グレイスが声を出す。力が抜けた上、声まで漏らしてしまった。
 まっすぐに伸ばしていた腕がくの字のように曲がり、距離がさらに縮まった。

「積極的だな」
「ち、違う!」
 
 擽られて我慢ができなかったことを言っても、彼はまるで聞いていない。
 左右の手を交互に動かして、好きなところを滑らせている。だんだん焦っていると、エメラルドが笑みを深くしながら見上げている。

「いい加減に・・・・・・」
「アクア・・・・・・」

 エメラルドは右手でグレイスの後頭部を引き寄せ、口づけをしようとしてきた。
 されるがままなんて嫌なので、グレイスは咄嗟に頭突き攻撃をした。その攻撃を避けることができなかったエメラルドと避けてくれると思っていたグレイスは自分の額を撫でながら、涙を堪える。

「・・・・・・色気がない」
「私にそんなものを求めることが間違っているの」

 エメラルドの額が赤くなっているので、自分の額も同じくらい色がついているだろう。

「色気のある人がいいのなら、もっと他にいるでしょ?」
「どうでもいい・・・・・・」
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