黄昏の特等席
 立ち去りたいのに、そうすることができず、彼はグレイスを逃がそうとしない。それに加えて、エメラルドはグレイスのことをもっと知りたいので、話を聞かせるように言ってきた。
 話すことなんて特にないことを言ったところで、彼が納得しないのはわかっている。

「何を知りたいの?」
「君は・・・・・・」

 内緒話をするように囁かれた質問はグレイスを一瞬で不安にさせるもの。

「・・・・・・君は本当にアクアマリンなのか?」
「なっ!」

 両肩を押されて、軽い音を立てて、ソファに押し倒された。
 黙ったままでいたら怪しまれてしまうので、グレイスは自分がアクアマリンであることを肯定する。

「本当に?」
「ええ・・・・・・」

 薄い笑みを浮かべながら見下ろされ、自分の心臓が早鐘のように鳴り響く。
 どうして突然そんな質問をするのか問いたいところだが、思うように口が動かない。彼の肩を押し返して距離を置こうとするものの、彼は距離を縮めてくる。

「肯定するのに随分時間がかかったな」
「それは、驚いて・・・・・・」
「驚いたか・・・・・・」

 エメラルドから視線を逸らしてしまいそうになり、慌てて視線を戻す。
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