黄昏の特等席
 こんな状況なのに、グレイスはエメラルドに告白をされた日のことを思い出す。無理をして倒れてしまったことを怒り、もう少し力を抜くように彼が言ってくれた。

「君は無理して頑張ろうとする。その結果がこれだ」
「・・・・・・そうね」

 無理をしていることは自分でもわかっていたが、倒れることなんて考えていなかった。

「・・・・・・前に言っただろう? 私に甘えてもいいことを」
「うん」

 エメラルドはグレイスに言ってくれた。
 あのときのことをグレイスも忘れてなんかいない。

「君を楽にしたい気持ちは今もある」
「どうして私に優しくしてくれるの?」

 エメラルドははいつだってグレイスに優しくしてくれる。

「教えてよ・・・・・・」
「そりゃあ、大切な女だからな。優しくしたくなるさ」

 苦しんでいるグレイスを見るのは嫌だから、エメラルドは力になりたいことをグレイスに言った。

「私と一緒にいるときくらい、力を抜いたらいい」

 無理をしてしまうと、また前のように倒れてしまう恐れがあるから。
 そんなことにならないようにするためにも、エメラルドはグレイスに自分を頼るように言った。

「何も怠惰でいるように言っていない。頑張っているアクアも好きだ。だからこそ、無理をしてほしくないんだ」
「あっ・・・・・・」

 目を閉じているエメラルドが顔を近づけ、グレイスの唇と重ねる。
 熱も、感触も、優しさもグレイスは忘れてなんかいない、忘れるなんてできない。
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