黄昏の特等席
 ハムロールを食べたことを教えると、他にも何か食べるべきだったと言われた。

「そのときは食欲がなくて・・・・・・」
「それは・・・・・・私がいなかったから?」
「・・・・・・うん」

 エメラルドと話をしながら食事をするので、それができなくなってしまった途端、食欲がなくなり、美味しさを感じられなかった。
 素直に肯定したグレイスに驚きつつ、エメラルドは嬉しく思っていて、さらに強く抱きしめる。
 腕の力が強まったので、グレイスは彼の顔を見上げる。すると、彼はグレイスの額に口づけをした。

「今のは君が悪いんだ」
「私? どうして?」

 何か失礼な態度でも取ってしまったのだろうか。
 グレイス自身、そんなことをした覚えは全くないので、エメラルドに言われて焦る。

「どういうこと?」
「可愛らしく見上げられたら、さっきのようなことをしたくなるんだ」

 俯いて顔を必死に隠そうとするグレイスを見て、それが計算なのか疑いたくなった。
 照れ隠しでそろそろ仕事をしようとするグレイスをエメラルドは止め、持っている時計を見せた。

「まだ就業時間まで時間がある」
「そうね・・・・・・」
< 147 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop