黄昏の特等席
 疑問を抱いたエメラルドはすぐに嫌がる理由がわかり、グレイスに謝罪した。

「すまなかった」
「それは・・・・・・何の謝罪?」

 急に素直になったので、グレイスは念のために確認をする。

「今晩だけ部屋に行くことに対して怒ったのだろう?」
「なっ!」

 否定しようとするグレイスは腕を掴まれ、エメラルドに部屋まで連れて行かれそうになり、足で踏ん張った。

「遠慮するな」
「し、していない!」

 警戒していたのに、エメラルドが言った通りにされそうになったので、腕を振って自由になると、彼の手が届かないところまで走った。
 
「こら、図書室は走るところじゃない」
「・・・・・・はい」

 正しいことを言われて、余計に腹が立ったグレイスは謝った後、まだ片づけられていない茶器を見下ろす。
 それを片づけようとすると、エメラルドが片づけるので、そのままにするように言った。

「それでは、お先に」

 すぐに行くから、ベッドで待っているようにエメラルドに言われ、グレイスは慌てて部屋に戻り、鍵をかけた。
 外からの笑い声はただの幻聴。そう自分に言い聞かせて。
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