黄昏の特等席
 ただ、二人きりでないときに本当の名前で呼ばれると、後で面倒なことになる。
 生意気な言い方をしたと思っていると、エメラルドは特に気にしていない感じだった。

「そのときによって、名前を呼ぶことにしよう」
「どんな?」
「例えば・・・・・・」 
 
 ベッドの上にいるときだけ本当の名前を呼ぶことを考えている。それを聞かされたグレイスは怒って、別の方向に顔を向けた。
 自分の方向に向けようとせず、エメラルドはグレイスの頬にキスをした。

「いきなりしないで」
「言ったらいいのか?」

 だったら、事前に相手に伝えたらいいのだと考えた。

「こっちの頬にもするぞ? いいな?」
「やっ・・・・・・」

 やめさせようとする前にキスをされ、手で頬を拭った。

「どうしてそんなに怒っているんだ?」
「怒らせるようなことばかりするから」
「そんなことしていない」

 グレイスが怒っていても、エメラルドは怖がったりしない。
 しかし笑顔を見たくなったので、どうしたら機嫌が直るのか、本人に直接質問した。

「教えてくれないのか?」
「教えない」

 自分で考えるように言われたエメラルドはスキンシップを少しの間、控えることにした。

「ちょっと触れただけですぐに恥ずかしがるな」
「あ、当たり前だよ」
「うぶちゃん」

 おかしな呼び名で呼ばれたので、普通はそんな風に呼ばないように怒る。
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