黄昏の特等席
腕の中
 本の貸し出しや返却の仕事を一日中しているというイメージを持っている人達がたくさんいる。普通は図書ポストに返却された図書を確認するのだが、この屋敷の図書室に訪れる人は誰もいないので、その必要がない。
 図書室にある本の整理をすることも大切な仕事で、エメラルドに命じられて、一緒にその仕事もするようになった。
 書架にある一冊の本を手に取り、他の本と交互に見る。

「・・・・・・何これ?」

 グレイスが怪訝な声を出すと、エメラルドが書架の間から顔を出した。

「君がいてくれて助かるな。一人だと、この仕事は大変なんだ」
「『異性を振り向かせる恋愛心理学』が置かれている・・・・・・」

 書架から本を抜いては溜息を零して、全然整理がされていないことに呆れている。
 大量の本を抱えて移動していると、エメラルドが横から取って、正しい場所に並べた。
 エメラルドはいつもグレイスが大量の本を持っていると、必ず彼が持ってくれる。手が荒れていることを知ったときも彼が手荒れに効く薬をわざわざ持ってきてくれた。
 そういうところを見て、根は優しい人だという印象と同時に別の印象もある。

「全部並べたぞ」
「うん・・・・・・」
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