黄昏の特等席
 ミルドレッドのことを思い出したグレイスは涙を零しそうになった。
 そんなグレイスに全く気づいていないヴァネッサは早くアクアマリンのペンダントを出すように急かしている。

「・・・・・・いつまで待たせる気よ?」

 ヴァネッサの肩に手を置いたブライスはグレイスの顎を持ち上げる。

「貴重なペンダントをある人物に預けていた」

 グレイスもヴァネッサも黙って、ブライスの話を聞いている。

「しかし殺されてしまったんだ。この女が・・・・・・殺した」
「なっ!」

 ブライスは突然何を言い出すのか。彼の考えていることが全くわからない。
 グレイスの考えは顔に出ていて、彼はそれを一瞥してから、話を続ける。

「その辺に店で売られているものではない。それほど貴重なものを人のものだと知っていて、無理矢理奪った。で、邪魔者を殺害してから、この屋敷に侵入した」
「さっきから何を言って・・・・・・」

 グレイスがアクアマリンのペンダントを利用して、近づこうとしていたことを言う。

「魔力が込められているからな。悪さをしようと思えば、いくらでもできる」
「違っ・・・・・・」

 首を横に振って否定しても、グレイスを信じる者は一人もいない。味方なんて、最初からどこにもいなかった。
 図書室で一緒に働き、お喋りをしたり、食事をしたりしながら、グレイスは自然とエメラルドを信じるようになった。彼はそれを狙って、グレイスをそばに置いていたのだ。
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