黄昏の特等席
「ほら、さっさとペンダントを出しなさい」

　グレイスはこのまま潰れてしまう。そう思うと、目の前で上下に揺れているヴァネッサの手がぼんやりと見えてくる。
　アクアマリンのペンダントをなくしてしまったので、グレイスが持っているはずがない。

「・・・・・・持っていない」
「そんな嘘を吐いても無駄よ。いいから出しなさいよ」

　同じことを繰り返すと、ヴァネッサはブライスに困った顔を向ける。それを見た瞬間、何かが音を立てて崩れた。

「いい加減にして！　本当に何も持っていないもの！！」

　涙を零さないように力を入れながら、感情をそのまま言葉にして、彼らを鋭い目つきで睨みつける。
　ブライスがメイドに視線を向けると、彼女はグレイスをどこかへ連れて行こうとする。

「やめて！！」
「調べるだけだ」

　早く連れて行くように命令を受けたメイドに腕を掴まれ、それを振り解いて、暴れだした。
　メイド達が慌てて押さえようとしても、さらに激しく暴れて、彼女達を飛ばした。使用人がグレイスを押さえて、無理矢理引きずり出されてしまった。
　別の部屋へ連れて行かれ、一人のメイドがグレイスの服を調べて、ポケットの中からアクアマリンのペンダントを取り出した。

「どうして・・・・・・」

　そんなところに見つけられなかったアクアマリンのペンダントが隠れていたのか。
　メイド達がブライスにそれを渡しに行って、グレイスは一人になった。しばらくしてドアノブを回され、ゆっくりとドアが開いた。
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