黄昏の特等席
　ドアを開けた彼を見たグレイスは顔を青ざめている。目の前にいるのはグレイスが最も会いたくなかったクルエル＝シェリダン。

「まさかこんなところにいたなんて・・・・・・」
「あ・・・・・・・」

　どうして彼がここにいるのかわからず、ただ頭が混乱した。

「そんなに・・・・・・僕から逃げたかった？」

　どんなに捜してもなかなか見つからず、どうしようか考えていたときにヴァネッサが連絡をしてくれた。

「どうして・・・・・・私のことを？」
「まだそんなことを言うんだ・・・・・・」

　クルエルがどれだけグレイスを好きなのか知っていながら、そういうことを言ってくる。
　何度も繰り返し言い続けたのに、全然届いていなかった。

「僕は君のことが好きなんだよ！　どうして理解しないんだよ！？」
「私は・・・・・・」

　声を出そうとしてもなかなか出すことができず、何度も息を吸い込んだ。

「私は・・・・・・あなたのことを好きになんてならない！」
　
　今まで散々大切な者達を傷つけて、自分のそばから離れないようにするために酷いことを続けて、よく告白ができたものだと思う。
　帰りたくて仕方がなかった家でグレイスの帰りを待ち続けた祖母は病気で亡くなった。母はグレイスを捜している間、事故で亡くなったことを随分前に聞かされた。そのことを嬉しそうに話した彼を好きになる気持ちは一ミリもない。

「君は僕のものだ！　どうしようと僕の勝手だ！」
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