黄昏の特等席
 好きにならないことを聞いたクルエルは自分の感情を止めることができなかった。
 助けてくれる者なんて一人もいないのに、自分から逃げようとしているグレイスが滑稽に思えた。

「私はあなたのものではありません!」
「それこそ間違いだ!」

 再度同じことを繰り返すと、グレイスは全力で否定をした。

「これ以上、誰かが死ぬところなんて見たくないでしょ?」
「なっ・・・・・・」

 グレイスが言葉を失っていると、クルエルはこちらに来て、自分の手を取るように命じてきた。
 この屋敷でグレイスがどんな風に周囲の人達と接してきたかわからないが、前以上にしっかりと閉じ込めてしまえば、自然に忘れるだろう。
 クルエルは自分のことさえ知っていたらそれでいいと本気で思っている。

「全然言うことを聞かないね・・・・・・」

 昔と全然変わっていないことにさらに苛立ち、クルエルがゆらりと不気味に動いた。
 身体的にも、精神的にももっと痛めつけたら、グレイスはクルエルに逆らうことを諦めて、従うようになるかもしれない。

「どんなに嫌がったとしても、今度こそ逃がさない。無関係なのだから!」

 クルエルは武器を取り出して、グレイスを狙ってそれを振り下ろした。
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