黄昏の特等席
「今年は雪が降らないな・・・・・・」
「そうだね。雪が好きなの?」
「嫌いではないな・・・・・・」

 言い方からして、それほど好きではなさそうだ。

「君は雪が好きか?」
「あなたと同じよ」

 小さい頃は友達と雪合戦をしたり、雪だるまを作ったりして遊んでいた。
 どんなに寒くても、濡れても、気にすることなく、積もった雪で遊び続けた。

「今年は悪くないな」
「どうして?」

 エメラルドにぐっと引き寄せられ、グレイスをしっかりと抱きしめている。
 彼の突然の行動にグレイスは目を白黒させた。

「寒いときにはこうすることができるだろ?」
「こんなこと、恋人にするべきだよ!」

 あんまりしつこくすると、主に報告をすると脅すと、彼はグレイスを解放した。

「つれないな・・・・・・」
「他の女の子達と一緒にしないで」
「へぇ・・・・・・」

 急に声が低くなったので、グレイスは振り返って、彼を見た。

「・・・・・・何?」
「私だけじゃなかったのだな」

 言っている意味が理解できずにいると、彼はグレイスの頬を手で優しく包む。

「アクアは私の『特別』がいいんだ?」
「なっ!?」

 頬が熱くなるのを感じ、動揺していると、エメラルドは嬉しそうだ。

「それならそうと、正直に言ってくれたら良かったのに・・・・・・」
「ち、違っ! 違うから!」
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