黄昏の特等席
 感じた痛みと同時に膝が曲がって、その場に座り込みそうになったところを、エメラルドが片腕でそれを止めた。
 両足でしっかり立とうと力を入れると、ふわりと浮き上がったので、足を上下に動かした。
 グレイスを横抱きにして移動しているエメラルドはグレイスが暴れても、気にしていない様子。
 着いたところはソファの上で、頭はなぜか彼の膝の上。

「・・・・・・何しているの?」
「見てわからないか?」

 そんなこと言われなくても、彼が膝枕をしていることはわかる。問題はどうしてこういうことをしているのか。

「さっき、主の話をしただろう?」
「そうね・・・・・・」

 膝枕と彼とどんな関係で結びつくのか。その答えはすぐにエメラルドが言ってくれた。

「主ばかり夢中になって、私には未だにつれない態度」

 芝居がかった言い方をするエメラルドはグレイスが何か言う前に言葉を続ける。

「彼も君のことを気にかけているしな・・・・・・」
「本当!?」
「本当だよ」
  
 エメラルドはグレイスの働きぶりや様子などを彼と話したらしい。
 それを聞いて、胸が熱くなり、嬉しさがじわじわと込み上げてきて、口元が緩んだ。

「だから、主に負けないくらい、私も君に好かれる努力をするのだ」
「・・・・・・しなくていい」

 こんなことをして、時間を無駄に過ごしたくない。
 そう訴えても、エメラルドは貴重な時間であることを言い、その説明をしようとしたので、グレイスは彼の頭を押し退けて、退散した。
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