黄昏の特等席
　グレイスは部屋に入ると、過去のことを思い出していた。
　パーティが終わって家に帰ろうとしたとき、グレイスはいつの間にか眠っていて、起きた場所は全く知らない部屋。とにかく部屋の外へ出ようとしたとき、一人の男が入ってきた。

「目が覚めたんだ」
「だ・・・・・・誰ですか？」

　自分はどうしてここにいるのか、目の前の男は誰なのか、わからないことがいくつもあり、頭が混乱していた。
　男の名前はクルエル＝シェリダンーーグレイスを連れてきた人物。

「家に帰してください！」

　グレイスの第一声がそれだった。
　しかし彼は首を横に振って、家に帰そうとしない。

「それはできない」
「どうしてですか！？」
「説明するから、話を聞いて」

　気を失う前のことを彼はグレイスに話し始める。
　グレイスが一人で帰り道を歩いていたとき、フードを被っている見知らぬ女がグレイスに近づいて、いきなり刃物で襲ってきた。
　それをかわして逃げようとしたとき、足が縺れて派手に転んでしまった。悲鳴を上げても、周りに誰もいなかったので、無意味だった。
　不気味な笑みを浮かべながらじりじりと追いつめられていたとき、背後から男の声がした。その声に驚いて、その場から走り去った。
　
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