黄昏の特等席
「思い出した？」
「はい、思い出しました・・・・・・」

　最近、この近くで十代後半から二十代前半の若い女が次々と殺される事件が連続で起きている。
　その犯人がグレイスを襲った人物と同一犯の可能性がある。

「あなたはどうしてあそこに？」
「僕は・・・・・・」

　クルエルは知り合いにパーティに誘われたものの、そういうものは好まないらしく、途中抜け出して、近くの店で時間を潰していたらしい。

「そうだったのですか・・・・・・」
「とにかく、また襲われるかもしれないから、しばらくの間はここにいること」
「そんな・・・・・・」

　これ以上迷惑をかけたくないことを伝えても、彼は首を横に振るばかりだ。

「でも、私・・・・・・」
「僕は迷惑だなんて思っていない。それに家に帰っても、狙われるかもしれないから。いいね？」

　返事をしないグレイスに苛立った彼はもう一度言う。

「いいね？」
「・・・・・・はい」

　ひたすら説得されて、グレイスは渋々そのことを受け入れた。
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