黄昏の特等席
 何か割れる音が耳元でして、目が覚めた。
 グレイスがいる場所はエメラルドが用意してくれた部屋で、顔を下に向けると、空になったティーカップが粉々になっていた。

「夢だったのね・・・・・・」

 そこで初めてグレイスは紅茶を飲んで椅子に座ったまま、眠っていたことに気づく。
 ティーカップの破片を日本の指で掴むと、指に一本の線ができて、そこから真っ赤な糸のように血が浮き上がってきた。
 無残な姿となったティーカップを虚ろな顔で見下ろす。壊れて元に戻らないところが自分そっくりで、それと重ね合わせている。
 箒と塵取りを取りに行くため、視線を外して、部屋を出た。ここから一番近い場所は図書室なので、そこにある箒と塵取りを借りることにした。
 部屋に戻って、さっさと壊れたティーカップを集めて、再び図書室へ行く。
 図書室に入ると、時間は関係ないように感じる。明るい時間にも暗い時間にも、ここに来る人は本当に誰もいない。エメラルドと二人きりで過ごす時間が多く、話をしなければ、誰もいないのと変わらないくらいに静けさを増す。
 一人でそんなことを考えていると、奥にあるソファがいつもと違うように見えた。

「・・・・・・あれ?」
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