黄昏の特等席
 恐る恐る近づくと、エメラルドが横になって眠っている。

「まさか、ずっとここにいたの?」

 呆れ顔で視線を下に向けると、途中まで読んでいたのだろう。本が落ちていたので、それをグレイスが拾おうと手を伸ばした。
 本に触れたと同時に彼の腕が動いたので、顔を覗き込むと、ぐっすりと眠っている。
 起きているときは色気が出ているものの、眠っているとそれは出てこない。
 それにギャップを感じ、グレイスの顔の熱が上がる。自分の手で頬を冷やしても、あまり効果がないので、溜息を吐く。

「エメラルド・・・・・・」
「何だ?」

 ぎょっとして彼を見ると、閉じていた瞼が開いている。

「なっ!」

 目が覚めた途端にグレイスは彼に手を引っぱられ、彼の上に倒れてしまった。
 エメラルドの顔を見ると、そんなに眠そうな顔をしていない。とてもさっきまで眠っていたとは思うことができない。

「暴れるな」
「いつから起きていたの?」

 彼はたった今、起きたことを言うが、それが嘘だとわかっているグレイスには通用しない。
 同じ質問をすると、グレイスが図書室に入ってきた音で起きたことを白状した。
 グレイスは彼に騙され、してやられた気持ちでいっぱいだ。正直悔しくて仕方がない。
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