黄昏の特等席
 グレイスは近寄ってきたエメラルドに本の中身を見せた。

「全然文章になっていないでしょう?」
「酷いな・・・・・・」

 他にも何年も使っていない本や情報が古い本などが思った以上にあり、それらを廃棄本として分けることは大変だった。
 長時間かけてやったので、グレイスはどっと疲れた。そのまま椅子に座ろうとしたとき、エメラルドが来たので、椅子を再び中に押し込んだ。

「私が持って行っても良かったのに・・・・・・」
「疲れて椅子に座ろうとしていたのに?」
「それは・・・・・・」

 見られたくなかったところをしっかり見られていたので、何も言えなくなった。

「それに、場所だって知らないだろ?」
「そうね・・・・・・」

 廃棄本を持って行った後に、他のところにも行っていたらしい。
 グレイスが肩を動かそうとする前に、エメラルドの指先が目の前にあったので、急いで後退した。

「何を!」

 目を丸くしたエメラルドはグレイスの髪に見えるか見えないか、小さなゴミがついていたので、それを取ろうとしていただけだった。

「何をされると思ったんだ? 君は・・・・・・」
「いえ、その・・・・・・」

 何をされるのかわからなかったから、怯えてしまった。

「ゴミ、取ってくれてありがとう」
「・・・・・・いつものところで休むとしよう」
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