黄昏の特等席
 二人で休憩室へ行くと、そこにはすでに紅茶や茶器がテーブルに並べられていた。
 グレイスに会う前にエメラルドが用意していたのだ。

「普段あまり飲まないものを用意したんだ」

 独特な香りが強く漂っていて、グレイスも馴染みのないものだ。
 紅茶の缶がテーブルの端に置いてあったので、その正体を見ようとすると、エメラルドがそれを遠ざける。

「何のお茶なのか知りたいの」

 間違ってもいいから、答えるように言われ、思いついた答えを声にして出す。

「・・・・・・ハーブティー?」
「ああ、その通りだ」

 正解したので、グレイスはちょっとだけ嬉しかった。

「香りが強いから薄めに淹れたんだ」
「普通に淹れたら、これよりもっと香りが強くなるのね」
「そういうことだ」

 エメラルドはどうしてハーブティーを飲むことに決めたのだろう。

「たまにはいいだろうと思っただけだ」
「そう・・・・・・」

 二人でハーブティーの味を楽しんだ後、エメラルドが今度は別のところで二人きりになりたいことを言い出した。
 グレイスが必要ないことを言っても、エメラルドが歩き始めている。
 グレイスがだんだん遠くなっていく空のティーカップを見ていると、角を曲がるときに顔面がぶつかりそうになった。エメラルドが振り向いて、立ち止まった。前を向いて歩くように注意をしてから、再び歩き出す。
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