黄昏の特等席
 いつもよりぐっすりと眠ったグレイスが目を開けると、椅子を発見した。
 それを見て昨夜のことを思い出し、慌てて起き上がろうとするものの、腹の上に自分以外の手があるので、眠気が吹き飛んだ。
 反対方向に顔を向けると、エメラルドが穏やかな顔で眠っている。

「いつから・・・・・・」
「何が?」

 エメラルドの声に驚いていると、彼の綺麗な瞳に自分の顔が見えた。いつ見ても吸い込まれそうになる。

「おはよう、アクア」
「おはよう」

 挨拶を交わすと、エメラルドが目を細めて笑った。
 それを間近で見た瞬間、グレイスは頬を染めて、きゅっと胸の痛みを感じた。

「それで何のことを言っていたんだ?」
「いつからここにいたの?」

 記憶が正しかったら、エメラルドはグレイスが眠るまで、ここにいることを言っていたはず。
 しかし、彼はそうでないことを言って、訂正する。

「私はアクアが寝るまで椅子に座っていることを言ったんだ」
「そう・・・・・・」

 彼はグレイスが寝ている間にベッドに潜り込んできていた。

「君はあったかいな・・・・・・」
「そう?」

 エメラルドはグレイスをしっかりと抱きしめ、嬉しそうに微笑んでいる。
 声をかけなかったら、そのまま二度寝をしてしまいそう。
< 51 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop