黄昏の特等席
 本当にこういう部分を見ていると、グレイスは子どものようだ。

「私を何だと思っているんだ?」

 グレイスのハンカチやタオルではないことを言われ、頭を下げて謝った。

「謝るだけではな・・・・・・」
「ううっ・・・・・・」

 何かを要求してくる感じがするので、グレイスは彼の口が開くのを待った。
 できないことを要求され、しばらく言い合いが続き、次のティータイムのとき、グレイスに紅茶を淹れさせることに決定した。

「茶葉は選ばなくていいの?」
「それは私が用意する」

 今までグレイスもエメラルドに紅茶を淹れたことは何度もあったから、これに対して不思議に思う。
 エメラルドは近くにあるソファにグレイスを座らせて、覆い被さるようにして距離を縮めた。
 エメラルドにまじまじと見られると、恥ずかしくなる。本が手元にあれば、それで顔を隠すことができるのに、こういうときに限って、本がない。
 
「これくらいのことですぐに恥ずかしがって・・・・・・」
「だって・・・・・・」

 それ以上の言葉が続かず、顔を赤らめていると、エメラルドはグレイスの顎を指でなぞる。

「そんなに恥ずかしがっていたら、次に進むことができないぞ?」
「つ、次!?」
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