黄昏の特等席
「散歩しているとき、彼女を見たんだろう?」
「ど、どうして・・・・・・」

 グレイスが動揺していると、エメラルドもグレイスに会う前に見かけたのだ。

「あなたも見ていたのね・・・・・・」
「随分賑やかだったからな」

 確かに賑やかで楽しそうなお茶会だったことを思い出していた。

「やっぱり・・・・・・彼女のような人は好かれるよね?」
「ん?」
「何でもない・・・・・・」

 自分と全然違う彼女を見てしまったから、暗い顔になり、落ち込んでいたのだ。

「君がどうして暗い顔をしているのか、大体わかった」
「うっ・・・・・・」

 どんなにグレイスが隠そうとしても、エメラルドは必ず見つける。

「まさか・・・・・・主の中で自分の存在が消えるかもしれない・・・・・・。そんなことまで考えていないよな?」
「もちろん・・・・・・」

 そこまでは考えていない。主との絆が一人の女の存在によって、完全に消えるとは思っていない。
 ただ、自分の存在が小さくなってしまうかもしれない。そんな不安を抱えている。

「彼は君のことを気にかけて、いろいろと話をしていたぞ」
「本当?」
「嘘じゃないさ」

 それはヴァネッサがここに住むようになった後もそうだ。
 だから、下らないことでいちいち不安になる必要なんて、どこにもないことを言われ、グレイスはようやく笑みを取り戻した。
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