黄昏の特等席
「よっぽど気に入られているんだな」
「それは、あなたもじゃないの?」
「そんなことはない・・・・・・」

 グレイスとどんなことをしているのか、主に報告したときにグレイスをあまり振り回さないように怒られたようだ。

「ふふっ・・・・・・」
「ったく、私が怒られたのにどうして笑っているんだ?」
「想像したら、面白くて・・・・・・」

 エメラルドが主に怒られているところなんて、なかなか見られるものではないから、見てみたかった。
 突然エメラルドに抱きしめられたので、グレイスは硬直した。

「足が痛くなってきたんじゃないか? 運んでやろう」 
「いらない」

 お姫様抱っこをされて喜ばない女の子はあまりいない。グレイスはその中の一人だ。

「ほら」
「本当に嫌なの!」

 グレイスを見たエメラルドは少しずつ不気味な笑顔になっていく。

「どうして?」
「それは、その・・・・・・」

 お姫様抱っこをされることが苦手であることを教えたら、彼にからかわれる可能性が圧倒的に高い。

「当てようか?」
「やめっ・・・・・・」

 喋らせないようにするため、彼の口を塞ぐのが遅かった。

「怖いから、だろ?」
「ううっ・・・・・・」

 やっぱり当てられてしまったので、落ち込んだように項垂れると、項を撫でてきた。

「たまには積極的になったらどうだ?」
「そんなことを求めないで」
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