黄昏の特等席
 グレイスの服を選ぶ手伝いをしようとするエメラルドはその日が来ることを楽しみにしている。
 好みでない服を着るように押しつけても、絶対に着ないことを念のために言っておいた。

「心配しなくても、君に似合うものを選ぶよ」
「どんな服を選ぶつもり?」
「それはまだわからないな・・・・・・」

 グレイスが行く店をエメラルドは知らないので、どんな服があるのか、行かないと、選びようがない。

「あんまり派手な服は好まないだろ?」
「そうね。そんな服は嫌いだから買わない」

 外出するとき、アクセサリーを身につけるか、どんな靴を履くのか、質問をされた。
 アクセサリーはつけなくて、靴はそのときの気分と着る服による。持っている靴は二足だけなので、新しい靴を買うことも考えている。

「金にほとんど手をつけていないから、高価なものでも買うのかと思った」
「まさか。それに欲しいものは買っているよ」
「例えば?」

 部屋でよく読んでいる本や期間限定の紅茶を買うこともある。

「小物とかは嫌いか?」
「ううん、そうじゃないの」

 必要があれば、買ったりするものの、部屋にものを置くことをあまり好まないので、できるだけものを置かないようにしている。

「私の部屋、つまらない?」
「そんなことはない」
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