黄昏の特等席
「胸を張って言うことじゃないよ・・・・・・」
「私がこうしていたら、後ろから攻撃されることはないだろう?」

 その前に誰か変な人が来たら、こんなことをしていられない。

「あなたが一番怖いよ」
「私のどの辺が怖いんだろうな・・・・・・」

 グレイスに攻撃をしないことを言ってから、さっきより優しく抱きしめてくる。

「たまには甘えてもいいんだぞ?」
「それはできない」
「どうして?」

 人に依存したり、甘えたりすることはいけないことだと思っているから。

「どんなことでもできるようにしないといけないと考えているから、必死にやっているように見えるな」
「それは私があまりにも悪いから」
「そうか?」

 エメラルドから見て、とてもそのようには見えない。

「あんまり力を入れていると、疲れて倒れてしまう」
「大袈裟だよ」

 エメラルドの腕から逃れようとすると、大人しくするように言われ、腕の拘束が強くなる。

「そんなことない」
「本当に大丈夫だから」

 だんだん苛立ってきたグレイスはさらに抵抗して、ようやくエメラルドから離れた。

「完璧でいるように誰かに言われたのか?」
「いいえ・・・・・・」

 何事も完璧にこなすように言われたことは一度もない。

「私は要領が悪いから、他の人達より頑張るの・・・・・・」

 多種多様な本を読んで、勉強することは良いことだ。
 しかし、グレイスはそのことに集中するあまり、休憩をしようとしていないから、エメラルドは心配する。

「だけど、休むことは必要だ」
「・・・・・・はい」

 エメラルドが力強く言うと、グレイスは渋々頷いた。
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