黄昏の特等席
「ミルドレッドさん、おかえりなさい」

 ミルドレッドが戻ってきたところを見たグレイスは彼女に近づいた。いつもと様子が違っていることに気づき、首を傾げる。

「どうかなさいましたか?」
「いいえ!」

 何でもないことを言って、グレイスを部屋まで送る。
 ラッドが実家に帰ってしまったことを伝えられ、グレイスの笑顔も消えてしまった。
 彼に会うことができず寂しがっていると、ミルドレッドが彼と連絡をこれから取り合うので、またグレイスも会うことができる。

「ラッドもグレイスお嬢様に会いたがっていましたよ」
「本当ですか!? 良かった・・・・・・」

 くすくすと笑いながら話していると、部屋に辿り着いた。

「では、私はこれで・・・・・・」
「は、はい!」

 グレイスを中に入れてから、ミルドレッドは静かにドアを閉めて、その場から遠ざかった。
 後日、いつものようにクルエルが新しい贈り物を手にして、グレイスに会いに行っていた。今日の霧はいつもよりひどく、おまけに今日は灰色の雲で覆われている空を二人は眺めている。

「天気、良くなりそうにないですね・・・・・・」
「本当だね・・・・・・

 ひょっとしたら、雨が降るかもしれない。

「どうしたの?」
「あ・・・・・・」

 黙って俯くグレイスが気になり、クルエルは顔を覗き込んでくる。
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