黄昏の特等席
「ーー君はどんなことでも完璧にしようとするのか？」

　彼の問いかけに、グレイスは動揺を悟られないように頷いた。

「急にどうしてそんなことを？」
「気になるからな」

　グレイスは普段からあらゆることを完璧にこなそうとするので、自分の首が絞まり、疲れが溜まる。
　力を抜けば楽になるのに、そうしようとしない。どんなに疲れていても無理をしてしまったり、誰にも何も言わないで一人で抱えてしまう。

「私はできないことが多いから、頑張らないといけないの」
「それは・・・・・・一人でか？」
「うん」

　グレイスは人の手を借りずに何でもできることが立派だと思っている。
　だけど、エメラルドはその考えはおかしいと思っているので、質問を続ける。

「一人で何でも抱えることが立派なのか？」
「そうよ・・・・・・」

　誰かに頼ってばかりいたら、いつまでも自分は何もできないままなので、頼らずにやろうとする。

「できないことをできるようにするためだったら、アクアのことを想ってくれる人を傷つけることも当然か？」
「や、それは・・・・・・」

　そんなことないことを言おうとすると、彼に甘えてもいい、誰かに頼ることは決して悪いことではないことを教えられる。
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