黄昏の特等席
「君の力になりたいんだ。アクア」

 それでもグレイスはどうしても素直にエメラルドに甘えることができずにいる。

「甘えるなんて、私には・・・・・・」
「できない? それともしくないのか?」

 どちらも当てはまることを伝え、ただ恥ずかしいからという理由ではないことを言葉にする。

「君は何を抱えているんだ?」

 どうしてそこまで頑張る必要があるのか、疑問は膨らむばかり。

「えっと・・・・・・」

 言葉を選んでいると、エメラルドがグレイスの耳元で話をいくらでも聞くことを囁くように言った。
 グレイスが顔を上げると、エメラルドの腕の中に閉じ込められる。
 この場所でだったら、安心して甘えてもいいのだ、と錯覚してしまいそうになる。甘やかされてしまうと、離れないように背中にしがみつきたい衝動に襲われる。

「言えない・・・・・・」

 沈黙が重くて、小さな声で謝罪を口にする。
 過去のことを誰にも知られたくなんかないので、どんなに苦痛でも我慢をする。

「そうか・・・・・・」

 溜息混じりに言われたので、呆れられたと思い、エメラルドから離れようとした。
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