さよならブルー
その時、運が良いのか悪いのか、ホームルームの始まりを告げるチャイムの音が遠くで聞こえた。


「やべ、遅れる」


口ではやばいと言いながらも、アオイは焦る様子もなく、学校の方にゆっくりと視線を流す。


「早く行って」


あたしも顔だけ振り返って、学校のある方を見ながらそう言った。


周りには、いつの間にかあたしとアオイ以外の中学生は誰もいなくなっていた。


「あ、乗ってく?」


視線を戻すと、相変わらず急ぐ様子の全くないアオイは、自転車の後ろに目配せしながら、ちょっとだけおどけた表情をしてみせる。


「乗らない」


あたしは呆れてため息をつきながら、アオイに背を向けて学校の方に歩き出した。


反対側では全然なのに、いつもこっち側には、自分でも驚くほど簡単に足が動いてしまうんだ。


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