さよならブルー
「反応冷た。せっかく美人なんだから、テキトーに愛想笑いしてくれるだけでいいのにさぁ」
アオイはすねたフリをしてぶつぶつとそんなことを言いながら、自転車に跨ったままの奇妙な格好で歩いて、あたしの横に並ぶ。
ただでさえ低いママチャリなのに、サドルを一番下まで下げているから、ゴツいスニーカーの足がほぼ地面についてしまっていた。
「はぁ?」
よく美人だなんて、恥ずかしげもなく言えるな。
別に、信じてないけど。
あたしだったらそんなこと、お世辞だとしても言わないし、本心ならなおさら言えない。
もしかしたらアオイは、あたしが思ってるよりもずっと女慣れしてるのかもしれない。
「俺も歩いて行こ」
そう言って笑うと、自転車からひょいと降りた。
1年前よりも、背が伸びている気がする。
前はほとんど同じ目線だったのに、他の女子と比べても高い方のあたしが、今では少し見上げなければならないくらいだった。
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