六本木グラスホッパー
三番目の話。
ボクたちはまず、五番街で聞き込みを開始した。
一見してマフィアに見えるような人間や、チンピラ風への聞き込みは避けた。
もしもその相手が白岩組のマフィアだったら、ボクらの身に危険が及ぶかもしれないからだ。
「昨日この辺りで、十三歳くらいの女の子を見かけませんでしたか?」
「細身で、髪の毛の色素が薄くて、綺麗な身なりの女の子なんだけど」
二時間ほど聞き込みを続けたけれど、みんな首を横に振った。
陽がくれ始めてきて、普段から薄暗い街がより一層暗くなってきた頃、ボクらは、
「おい、お前ら」
と背後から声をかけられた。振り向くと、ボクらと同じ歳くらいの少年が五人立っていて、そしてボクらを素早く取り囲んだ。
「お前らさっきから、この辺をチョロチョロ聞きまわってるな。一体何をしてるんだよ」
リーダー格らしい体格のいい少年が、睨みを聞かせて言い放った。
裾のきれたズボンに、ボロボロのジャケットを着ていて、汚れたスニーカーには穴があいている。他の少年達も似たり寄ったりの格好だった。
ハイエナに似た目を、ぎらぎらさせている。
ストリートチルドレンだ。
この界隈には、彼らのような子供たちが多くいる。経済的に苦しくて親に捨てられた子供や、生活苦で無責任な両親に先立たれた子供たちが、群れをなしているのだ。
彼らは路地裏や廃屋、河川敷に住みつき、窃盗や引ったくりをして生計を立てている。彼らのような子供たちを保護する施設は、まだこの街には少なく、ストリートチルドレンの急増は深刻な社会問題になっている。
「人を捜してるんだ。文句あるのかよ」
強気な口調でアラタは言い返した。
リーダー格の少年は、不愉快そうに顔を歪ませた。