六本木グラスホッパー
「ど、どんな奴だよ」


「ボクらと同じ歳くらいの女の子だよ。この辺りには似つかわしくない綺麗な格好をしていて、華奢な感じの。昨日この辺りを歩いていたはずなんだ」


ボクが言うとリーダー格の少年は子分達に、「お前ら、見たか?」と訊いた。

みんな首を横に振った。


「その女がどうしたんだよ?」


アラタの手に解放されて、げほげほと咳き込みながらリーダー格が言う。


「昨日から姿を消しちまったんだ。もしかしたら何かの事件に巻き込まれているのかもしれない」



「オレたちは、見ちゃいねえぜ。」



少年達はボクらから一歩後づさった。
そして、リーダー格がこんなことを言った。



「さがしモノは"グラスホッパー”に頼んだらどうだ?」



その言葉に、ボクとアラタはおもわず顔を見合わせてしまう。



「グラスホッパーだって?」



「グラスホッパーって、あの?」



グラスホッパー。
その単語は聞き慣れていて、けれど現実味のない言葉だった。



怪盗グラスホッパー。
この煙町の都市伝説。



煙のように現れて、盗みを働き、そしてまた煙のように消えてしまう。
その姿は誰も見た事がない。
正体不明の謎の怪盗は、子供たちのヒーローだ。



「グラスホッパーって、あの怪盗の?」



アラタは口の端を歪めて笑った。狐顔の少年が、



「怪盗なんかじゃねえ!」


と叫んだ。


「世間一般的に、グラスホッパーは怪盗だなんて呼ばれてるけど、奴はそんなんじゃねえ。グラスホッパーは『探し屋』だ」


「探し屋?」

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